こんにちは!繊細(=HSP)看護師のみなみです。
突然ですが「受付の電話対応が苦手」「いつも聞き間違いが多い」「聞き返しすることが多い」と感じる事はありませんか?巷では「固定電話恐怖症」という言葉もあるようです。
話を「ききとる」と言うのは簡単の様で複雑な作業を行っています。
耳で音を「聞き」→情報が脳に運ばれ→脳が認知→話を記憶しながら知識とすり合わせ考え理解するという事を一瞬で行っています。
電話対応の場合はここに話の流れを推測し電話時間内に判断し返答するという作業も入りかなりストレスを感じます。
電話であると相手の表情や口元の動きも見れないためさらに話を汲み取りづらくなります
私も病院の外来勤務の時に一番苦手としていたのが、受付の電話対応でした。音情報としては耳に入っているのに言葉として分からない…そんな「聞き取る」事に困難感を感じていた時にAPDという言葉を知りました。
APD(聴覚処理障害)とは聴覚に異常が無いのに耳から入ってきた音の情報を脳で処理して言葉として理解する事ができない…という障害です。
APDの要因としては、HSPの様に生まれ持った特性が関係する事が多いようです。
そのため、APDが治るという事は一部(心理的な問題タイプのAPD)を除き難しいです。
「聞き取り困難」の特徴があっても生活が送れるように工夫していくことが大切です。
この記事を読むことで分かる事は以下です。
- あなたがAPDの可能性があるか分かる
- APDの日常の工夫が分かる
APDセルフチェックリストも2種類あるので参考にしてくださいね!
今回は以下2冊のわかりやすい書籍を参考にしています
APD(聴覚情報処理障害)とは
Auditory Processing Disorder(APD=聴覚情報処理障害とは、聴力検査で正常と診断されても日常生活において聞き取りにくさを訴える症状の事を言います。
1950年代から欧米では研究が始まっていますが明確な診断基準や原因は確立されていません。そのため、日本の医師でも詳しくは知らない方が多いようです。
大人になってAPDの症状がある事に気づく人がいます。大人のAPDの方は
- 聞き間違いが多い
- 音は聞こえるのに言葉が聞き取れない
- 電話で相手が何を言っているか分からない
- 複数の人が話していると何を言っているのかわからない
などの症状があることで日常生活(特に仕事)に支障をきたします。
最近の研究では人口の1%がAPDの可能性があるとの研究も。
HSPと同様に社会生活を送る事で次第に障害に気づき苦しむ人が多いでしょうね…
大人のAPDは4タイプある
APD「音は聞こえているのに聞き取れない」人たちの著者:小渕千絵氏は臨床経験からAPDには4種類の種類があると定義しています。
- 脳損傷タイプ
- 発達障害タイプ
- 認知的な偏り(不注意・記憶力が弱い)タイプ
- 心理的な問題タイプ
脳損傷タイプとは脳梗塞や脳出血などの影響で片側の中枢聴覚系の途中ででダメージが生じているものです。
脳損傷後の高次機能障害が落ち着いた後に生活の中で「聞き取りづらさ」を自覚する事が多いようです。この場合、生活や職場の環境を調整したり協力を得る事で対処していきます。
発達障害タイプとは生まれつきの脳の認知機能の発達段階にムラがあることで生じる障害です。
絵が得意・苦手な人が居るように、コミュニケーションが苦手であったりと人により苦手な事は違います。得意な事と苦手な事の差が極端に大きいのが特徴にあり、日常生活に支障をきたしている人も多い障害です。APDの「聞き取りづらさ」が発達障害の症状の1つとも言えるのです。
こちらも、生活や職場環境を調整し周囲の協力を得る事で対処していきます。発達障害の症状を和らげる内服を服用する事もあります。
認知的な偏りタイプとは、注意力と記憶力がどちらかに偏って弱い事で「聞き取りづらさ」が起きるというものです。
話を「聞く」というのは相手の話に集中して、聞いたことを記憶していく事を行います。そのためどちらかの能力が弱いと瞬く間に「聞き取りづらさ」が生じます。性格の気質として不注意であったり記憶力が弱いとAPDが起きやすいという事です。
こちらも、生活や職場環境の調整し周囲の協力を得る事で対処します。
心理的な問題タイプとは、ストレスや気持ちの持ちようで「聞き取りづらさ」が起きるというものです。
ストレスや不安な事があるとそちらに意識が持っていかれ、色々なことに集中することが出来なくなります。上の空状態になる事で、話に集中して聞く事ができなくなります。ストレス自体が「聞き取りづらさ」の原因になります。
この場合、ストレスや不安因子が無くなればAPDの改善が期待できます。
私の場合、外来勤務でストレスを強く感じていた際に「聞き取りづらさ」を感じていました。現在、外来勤務から離れており「聞き取りづらさ」は感じません。そのため、以前の聞き取りづらさは「心理的な問題」が背景要因にあったと言えます。
また、小渕氏は性格によっても聞き取りに差が出るとも述べています。
APDではないのにAPDのような症状を感じている人の特徴として、
- 「気にしやすい」「真面目」
- ミスを自分の責任に感じやすい
- 人との関わりの中で自分との状況が良く見えている
と述べています。
もろにHSPの特徴ですね。
「また聞き間違いした…」「また聞き返したら怒られるかも」と聞き取れない状況に過剰に反応してしまって「自分は聞き取れない、能無しだ」と思ってしまい→ストレスを感じ→さらに聞き取れないという負のスパイラルに陥ってしまいます。
HSPのストレス対処と同様に、自己の時間を持ち「気にしすぎない」と言うのも「聞き取りづらさ」の対処の一つになるかもですね。
大人のAPDセルフチェックリスト|2種類
まずはじめに、こちらのチェックリストは聴力に問題が無いが「聞き取る」ことが出来ないことがリスト活用の前提条件です。
また、診断ではないのであしからず!
小渕千絵氏の大人のセルフチェックリスト
大人向けのAPDチェックリストはあまりないため、小渕氏の臨床研究、実践の経験から作成された大人のAPDチェックリストになります。まずは、こちらのセルフチェックリストを紹介させてもらいます。
1,16項目の設問に対して0~10点で回答。あまり深く考えない。
2,設問1~4、設問5~8、設問9~12、設問13~16のそれぞれの合計を計算する。最後に総合点も計算します。
チェックの見方
16設問の総合点が109点を下回っている場合はAPD症状を抱えている可能性があります。
また、それぞれの設問は以下の事をチェックしています。
設問1~4(音声聴取に関して)➡雑音の中でどの位聞き取れているか
設問5~8(空間知覚に関して)➡音がどこから聞こえているか
設問9~12(聞こえの質に関して)➡音声以外の音が聞こえているか
設問13~16(心理的側面に関して)➡心理的な影響
項目をブロックに分ける事で、どの分野が弱いのか分かることが出来ます。
詳しいチェックの見方、考え方はAPD「音は聞こえているのに聞き取れない」人たちをぜひ読んでくださいね。
APDの事がこの本1冊で分かります。APDの事が知れて心が少しだけ軽くなりました。おすすめです♡
フィッシャーの聴覚情報処理チェックリスト
本来は子供のAPD診断に使うために作られたものですが、そのまま大人にも使用できるようです。
インターネット上で本家のチェックリストを発見できなかったため、聞こえているのに聞き取れないAPDがラクになる本を参考に紹介します。
- 該当すると思われる項目をチェックしてください
- 最終的には該当しなかった項目数を診断に使います。未該当の項目数を数えて控えてください
子供向けのため、学習態度や教師からの指導に関する内容が多いです。
子供のころに当てはめるか、もしくは現在の職業の上司等に置き換えてチェックすると分かりやすいです。
※1形態論とは【出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』ナビゲーションに移動検索に移動】
※2音韻とは【出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』ナビゲーションに移動検索に移動】
チェックリストの見方
該当しなかった項目数に4%をかけて下さい
該当しなかった項目数×4%=○%
100%中72%を下回るとAPDの確立が上がります。しかし、こちらの結果はおおよその目安程度にとどめてください。
フィッシャーのチェックリストは発達障害を持たれている方のチェックリストの様に感じます。大人には少し該当しない内容もある感じで使いづらい印象です。
聞き取りづらさを改善する工夫|4つの方法
APDの症状が出ている場合、一部(心理的な問題)を除いては治すことは難しいです。それは、上記に書いたように生まれ持った特性が関係する場合が多いからです。そのため、環境を整えたり周囲の協力を得る事で対応するしかありません。
聞き取りづらさを改善する工夫としては以下4つがあります
- ポジティブな気持ちをもつ
- 聞き取りの悪さを別の手段で補う
- 職場などの環境の改善
- 周囲の協力を得る
下に行くほど他者に協力を仰ぐ形になります。まずは一番上から試してみましょう。
ポジティブな気持ちを持つ
「おいおい気持ちからかよ」
と思うかもしれませんが、考え方の癖をほんの少し変えましょう。
APD症状があると何事にも否定的になりがちです。「また聞き間違いした、自分は何もかもダメな奴だ」とネガティブな思考があると前に勧めません。まずはポジティブな気持ちを持って「聞き間違いしたけど、次はきっと大丈夫」と思う心も大切です。
ポジティブな気持ちがないと以下の工夫も上手に実践に移せません。
自分の一番の味方はじぶん!
聞き取りの悪さを別の手段で補う
例えば会議の内容を音声レコーダーで録音する。音声を文字変換してくれるアプリを使用する。口頭の指示の場合すぐにメモを取るようにする。もしくは、口頭の指示の場合は書面に起こしてもらうよう依頼する。などです
メモに関しては、腕に巻き付けるバンドタイプに「ウェアラブメモ」が使いやすいです。
ノイズを除去する機械の利用も有効です。デジタル耳栓やノイズキャンセリング機能付きのワイヤレスイヤフォンなど様々な機械があります。
日常の中で聴覚のトレーニングをすることも意識づけましょう。例えば
- ラジオを内容を意識して聴く
- オーディオブックを意識して聴く
などを日常生活に取り入れましょう。今は無料でポットキャストなど様々な音源を聴くことが出来ます。慣れてきたらテレビをつけたままラジオを聴くというトレーニングもできます。
プロではない身近な人がやっている感じのラジオが丁度よいです♡
環境の改善
APDの症状がある方は周囲の騒音で極端に聞き取りが悪くなるため、静かで落ち着いた場所で作業できるよう工夫が必要です。会話の際はラジオやテレビをOFFにする、個室へ移動するなどです。
また、人間は話が聞き取れなくても相手の口の形を見ながら音声情報を補足することができます。
そのため、相手の口が見えるように向かい合って話をするようにすると視覚からの情報で補足することができます。
マスク無しで向き合って会話は今はコロナで皆マスクをしているからちょっと難しそうね。
聴覚に障害を持たれている方のために、口元が見えるマスクも発売されていますが、向き合って口元を会話するのは職場では難しそうですね。現在の状況からすると外ではかなり難しいですが、家族間では有効です。
周囲の人の協力を得る
上記で書きましたが、口頭指示や口頭伝言は文字にしてもらうのが一番です。また、会話をする際に利用できる個室の準備や、ボイスレコーダー使用許可など周囲の人の理解と協力なしではできません。
APDの症状を人に言いたくない人も多いと思いますが、自分の状況を他の人に伝える事でカバーしてくれたり職場環境を調整してくれる可能性があります。
周囲の人の協力内容としては
- 大事な話は1対1でしてもらう
- 約束事や口頭指示などはメモにしてもらう
- 静かな環境で仕事ができるよう配慮する
- 場合によっては部署移動の検討
- 正確な聞き取りが必要な仕事は担当を配慮する
などです。そのためにも、上司は近しい人にAPD症状については伝えておいた方がいいです。
私の場合、受付の電話業務がどうしてもできなかったため思い切って上司に相談しました。それによって受付業務は免除してもらえました。後輩の手前くやしい、虚しい気持ちはありましたがストレスが少なくなったことで働きやすくなりました。
職場を見直す事もAPD症状がある方には大切
小渕氏はAPDの方にとっては「接客業のように人の話を聞き取ることが中心になる仕事や、騒音下での作業が必要になる仕事などは、あまり向いているとはいえません。」と述べています。
確かに、APD症状があった状態でコールセンターの仕事は致命的ですし、職場の環境調整や自分の努力だけでは補えないこともあります。
HSPと同様に、APDの方にとっては職場選びはかなり大切です。
では、APDの方にとって向いていない・向いている仕事とはどんなものがあるでしょうか。
APDに向いていない職業(例)
平野氏は臨床で見た患者さんの職業として以下の職業をあげています
- 美容師
- 歯科衛生士
- 救急隊や消防士
- 工場勤務
- コールセンター
- 居酒屋レストランの店員
小渕氏と同様に人の話を聞き取ることが中心の仕事や、騒音下での仕事がAPDの症状がある方には難しいという事が分かります。
APDに向いている職業(例)
APDに向いている職業としては静かな環境で働く職業、1人作業が中心の職業、聞き取りを必要としない職業が考えられます。一人で出来る仕事を調べると以下がありました。
- Webライター・Webデザイナー・コピーライター系
- データ入力
- 新聞配達・ポスティング
- トラックの運転手
- 宅配物仕分け
- 工場のライン
- 整体師・エステ
- イラストレーターや小説家など美術系
などです。どうしても賃金が安定しない業種になってしまいます。
世の中には様々な職業があるので、部署が違うだけでも働きやすい職場はあります。まずは現在の職場環境をみなおして自分に合った職業を探しましょう。
自分の苦手とする事を避けながらも、自分らしく働ける職場を探しましょう!